第十七話
とある王女と騎士の恋歌・前篇
ベッドの上に投げ出された白い肢体が、腰の動きに合わせてからくり人形のようにカクカクと揺れている。夜通し飽くことなく女の胎を貪り続け、本来ならばすでに空に日が高く昇った頃だろうか。
女の体を乱雑に仰向けに裏返して、視界に入ってきた血の気の失せた青白い肌にふいに手が止まった。
そういえば、少し前まで(とは言ったものの正確な時間は定かではない)ホメロスが女を貪る動きに反応して微かにうめく声がこの耳に届いていたはずだが、今はまったく静かなものだった。
「ナマエ?」
死んだようにピクリとも反応を返さないことを不思議に思って、彼女の顔に掛かる乱れて絡まった髪を払いよけながらそっと呼びかけた。顎を掴んで、明後日の方を向いていた顔をこちらへと向ける。
「……っ!」
死人のように青褪めた顔が目に飛び込んで来て、ホメロスはざあっと全身から血の気が引いてゆく音を聞いた。火傷をしたかのように顎を掴んでいた手をぱっと反射的に離す。女の細い首ががくりと落ちるように再びシーツに沈んだ。
頭がぐらぐらとする。興奮で今まで忘れていた疲労感が戻ってきて、体中へと巡り始めたようだった。下腹部を見下ろせば、彼女の胎の中へと突き立てた凶悪な己の槍が視界に入る。ぐっと重い腰を引いて突き立てていたものを抜くと、ごぽりと大量に薄紅色のまじった白濁液が流れ出した。中で出血しているのだろう。
「……うそだろ?」
呟いた声が虚しく部屋の中に響いた。この狭い胎の中に、いったいどれほどの欲望を放ったのか。まるで酒で酩酊したかのように昨晩の記憶が曖昧だった。
たしか昨日は、……ああ、グレイグと遭った。その興奮が醒めぬまま、彼女の零した言葉に捻じ曲がった自尊心がいたく刺激され、罰するようにその体を組み敷いたのだ。
今思えば、とても些細な一言だ。正論でもあった。だがそれを指摘したのが他でもないナマエだということがとても気に障ったのだ。
激情をそのままぶつけるようにして酷い抱き方をしてしまった。散々泣かせ追い詰め、飽き足らず魔物の姿で何度も犯して。これではただの強姦ではないか。
しかも彼女の悲鳴が耳に心地よいとさえ思った。許して、というか細い懇願も、この耳にはすべて甘い囁きとなって届いていた。
瀕死のナマエを前にようやく消えかけていた理性が戻ってきて、自分のしでかした惨状を前に声もなく呻く。
認めたくない、こんな。
「ナマエ……、ナマエ!」
ぐったりとして反応のない彼女に焦燥感に駆られ、大きな声で呼びかけて肩を揺する。それでも微動だにしなく、恐怖で息が乱れそうになるのを抑えながら、彼女の胸の中央にそっと耳を押し当てた。
とく、とく、とく。
弱くはあったが、魔物の大きな耳は確かに彼女の心臓の鼓動を拾った。血色の悪い唇にそっと掌をかざすと、薄く開かれた隙間からは微かな吐息が漏れているのを感じる。ああ、まだ少なくとも彼女の心臓は動いている。抑えていた恐怖心がどっと溢れて、ざわざわと鳥肌が立つ。
抱き殺してしまったかと思った。あれほど大切にすると誓った人を、あろうことが自らの手で乱暴するなんて。
認めざるを得なかった。己の中で無限に膨れ上がる魔物の残虐な性質を。闇に蝕まれてゆく自分が恐ろしく、目の前の光景を直視することができない。
部屋に充満する、むせ返るような性の匂い。ベッドのシーツは破け、無残に引き裂かれた枕からは零れた羽毛が辺りに舞い散っている。マットには鋭い爪で引き裂いたような跡が無数に残されていた。
あまりの惨状に言葉を失う。
ナマエはぐったりとして深く気を失っているようだ。彼女の肌にはくっきりとした噛み跡が複数箇所残されていて、犬歯による小さな穴がいくつも空いていた。
思い出したくもない。ナマエを凌辱しながら、なお飽きたらずあの柔肌に噛み付いて表皮に穴を開け、零れ落ちる血を啜ったのだ。その味を、悲鳴を、泣き声を思い出すだけでもざわりと興奮を掻き立てられホメロスは身震いした。深い後悔とともに魔物の罪深い性がざわめきだすものだから、もう手遅れだと思い知る。
口の中には甘い血の味がまだ残っている。甘美な彼女の血だ。いったいどれほどの量の血を啜ったのだろう。青白い女の顔を改めて見下ろす。あまりに大量の血を失えば、無論失血死という可能性は大いにある。
……このまま、彼女がずっと目を覚まさなかったら? 固く閉じられた薄い瞼をじっと見つめていると、恐怖に身が竦んだ。
「ナマエ、すまない。すまなかった。目を開けてくれ……。たのむ。目を開けて、オレを見てくれ……。オレの名を呼んでくれ……」
諦めるのはまだ早い。生き残った人間たちから癒し手を探し出して、ここに攫ってきて彼女の治療にあたらせるべきだ。いいや攫ってくる時間すら惜しい、ナマエを直接連れていった方が早い。考えうる最善の可能性を探りながら、しかし依然として恐怖に竦んだ体はまったく動く気配がない。
「ナマエ……」
まるで親を亡くして悲嘆にくれる子供のような、情けなく頼りない声だった。事実、どうしたらいいのかまったくわからなかった。
途方にくれたまま、ホメロスは気を失っている彼女の肩口に顔を埋めるようにして被さった。魔物の大きな翼がナマエの姿をすっぽりと覆い隠す。
触れる肌が冷ややかだ。彼女の奪われた体温を取り戻すように、ホメロスはナマエをぎゅっと抱きしめながらじっと息を潜めた。
そのまま、どのくらい時間が経っただろう。
ふと、さわりと風がホメロスの髪を撫でた。恐怖に竦む心を宥めるような、心地よい風だ。……いや、違う。部屋の扉も窓も開いていない今、これは風ではない。そう思い至った瞬間、弾かれるように顔を上げた。
腕の中に隠した唯一の宝物を恐る恐る見下ろす。
――うっすらと開いた目が、ホメロスを見ていた。
「ナマエ!!」
我を忘れ、大声でその名を呼んだ。ホメロスの髪を撫でていたのは風ではなく、弱弱しく持ち上げられた彼女の指先だった。その白い手をぎゅっと握りしめ、ホメロスは虚ろな目でぼんやりと視線をさ迷わせるナマエを覗き込んだ。
「ナマエ、オレのことがわかるか?」
生気を失ったガラス玉のような瞳が、じ、とホメロスを見つめる。ややあって、彼女はこくりと頷いた。反応が返ってきたことにどっと安堵を覚え、彼は深く溜息をついた。
「ナマエ、目を覚ましてくれてよかった……。すまなかった。昨日のことは、謝っても謝りきれん。頭に血が上って、自分を抑えることができなかった。あやうく、お前を殺してしまうところだった」
深い後悔とともに重々しく謝罪を述べれば、ナマエはぼんやりとこちらを見ているだけで何も反応は返さなかった。ただ、ひゅ、ひゅ、と苦しそうな掠れた呼吸音だけしか聞こえない。目覚めたとはいえ、変わらず具合は良くないのだろう。
はやく、ぼろぼろになってしまった彼女の体を癒さなければ。だが、そう思う心とは裏腹に、ホメロスの体は覆いかぶさってきた重たい罪悪感ですっかり動けなくなってしまっていた。
「……もう、オレの側にはいない方がいいのかもしれない」
彼女の身の安全のためを思って告げた言葉だった。だが言ったと同時に、彼女を手放したくないという強い思いに駆られてますます身動きが取れなくなる。今後、このような出来事が二度とないとは限らない。彼女を危険に晒したくはない。だが、手放したくもない。
俯いて苦悶するホメロスの腕に、そっとぬくもりが触れる。顔をあげればナマエがホメロスの腕を力の入らない指先で必死に掴みながら、今にも泣きだしそうな顔でこちらを必死に見上げていた。枯れきった声が、なにかを訴えている。ほとんど空気まじりの声が痛々しい。何度もきつく噛みしめた跡の残る荒れた唇がゆっくりと開いて、こう動いた。
はなさないで。
――瞬間、重苦しく垂れこめていた闇を切り裂くようにして、空が晴れていった。弾かれたように顔を上げて窓の方を見やり、ホメロスは久しぶりに目を刺す光に眩しそうに目元を眇めた。
「空が……」
そう、ロトゼタシアの大空に、久方ぶりの太陽が姿を現したのだ。
弱ったナマエを大切そうにその腕に抱き寄せながら、ホメロスは悟った。
廃墟のデルカダール城でグレイグらの相手を任せた屍騎軍王ゾルデが破れたのだと。奴が魔王に授けられたパープルオーブの力こそが、ロトゼタシアを大いなる闇で包んでいた。
……あいつが来る。
魔王の配下である六軍王のひとりを打ち負かした友は、確実にここまでホメロスを追ってくるだろう。ぞわぞわとした高揚感に肌が粟立つ。
堪えきれない身震いを噛みしめながら、腕の中のナマエもまた久しぶりの青空を見つめていることに気付いた。彼女はホメロスの視線に気づいて、無言で空を指さした。
「ああ。……じきに、来る」
誰が、とは言わなくても、きっと伝わっただろう。
魔物から人型に戻ったホメロスは、彼女の身を清めるべく浴室へと連れていった。何もしないと固く約束し、ナマエを腕に抱き上げたままぬるめに張った湯に身を浸す。
あちこちにこさえた傷口が湯で染みるのか、ナマエは湯に沈む瞬間肩をびくりと強張らせ、今は顔をしかめながらホメロスの胸にじっと大人しく体を預けている。いまだ生乾きの傷口から血が少しずつ流れ出して、透明だった湯を徐々に濁らせた。
「すまない。染みるか」
こくん、と彼女が頷く。俯いた彼女のつむじが、動きに合わせて揺れた。
「あとで、自分で傷口を癒せそうか? たしか回復呪文を使えただろう。無理なら誰か癒し手を連れてきてやる」
ふるふると静かに頭を振る。それがどちらの言葉に対する反応なのか判断できなかったホメロスは再度問おうとして、しかし逡巡ののち押し黙った。
ナマエは終始無口で、腕の中で緊張しているように身を固くしている。声は枯れているのだから仕方ないが、こうして触れ合っている肌からひしひしと伝わってくる拒絶感に、ホメロスはふたたび己の行いを深く後悔した。
幸いなことに、彼女は己の回復魔法により徐々に体調を取り戻していった。だがさえずりのみつで声を取り戻しても、ナマエの口数は元には戻らなかった。笑顔も陰りを見せている。
本能で畏れているのだ、ホメロスの事を。だがはっきりとした拒絶の態度は取られない。同じベッドで眠ることも許してくれている。だがほんの僅かでも肌が触れれば、途端にその表情に怯えが走る。
その度に罪悪感がひりひりと肌を刺し、いたたまれなくなる。いっそはっきりと拒絶してくれれば、
――くれれば、なんだ……?
刹那、脳裏に浮かんだイメージは凄惨なものだった。己の中に息づく魔物の残虐性を否が応にも見せつけられ、背に嫌な汗が浮かんだ。
半月が経った。自ら勇者の足取りを探りながら、ホメロスは各地に配置されたウルノーガの配下達のもとに向かい、迎撃の準備をするよう指示を下した。
ゾルデが勇者に倒され、世界は一変した。魔物の蹂躙の跡はくっきりと残されてはいるものの、大地も空もその輝きを取り戻してる。勇者が再びもたらした光により、人々の心に宿った闇への恐怖心は徐々に払拭されつつあるようだ。まったく忌々しい。
そんな折、魔軍司令が人間の女を囲っている、という噂が魔物たちの間で囁かれていることを耳にした。嫌な予感に襲われ急ぎナマエのもとに帰ると、せり出したバルコニーが視界に入った途端、耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。
予感は的中した。開け放たれたガラス戸の一歩奥で、倒れたナマエの上に魔物がのしかかっている光景が目に飛び込んでくる。
「ほんとだ、ほんとだ。にんげんがいたぞ」
「いたい……! やめて、髪を引っ張らないで!」
けたけたと笑いながらナマエを小突いたり髪を引っ張ったりしているその青白く小さな醜い生物は、知能の低いゾンビ系の魔物だ。いつも足代わりとしている骨だらけのドラゴンに騎乗して、壁を伝ってここまで乗り込んできたのだろう。
「ナマエ!!」
その光景に、胸に灯った激情が
「あ、魔軍司令さま! 魔軍司令さまはにんげんの女を飼っているんだな。たべるためか? うまそうなにおいのするにんげんだ」
空中へと崩れ落ちていくバルコニーの床をぐっと蹴り飛ばし、跳躍する。こちらに気付いてきゃらきゃらと不愉快に笑う魔物に躍り掛かって、勢いよく爪を振りかぶった。
「黙れ下劣な生物め!!」
一閃。遠心力を伴った重い一撃に吹き飛ばされた魔物の体は壁にぶち当たって潰れ、べちゃりと腐った血肉をまき散らしながら消滅した。
息を切らしながら魔物の無様な死にざまを見つめていると、足元で小さく己を呼ぶ声が聞こえハッと我に返る。襲われた姿勢のままのナマエが、体を震わせながら硬直していた。反射的に手を伸ばそうとして、びくりと震えた華奢な肩に己の今の姿を思い出す。慌てて人型の姿へと戻り、床にうずくまる彼女の上半身を抱き起して怪我がないかを探った。どうやら今度は無傷のようだ。ほっとして無意識にそのまま抱きしめてしまったが、幸いにも彼女からの拒絶はなかった。
「ナマエ、もう大丈夫だ」
縋るようにぎゅうとホメロスの衣服を握りしめ、強く体を押し付けてくるナマエの震える背を宥めるように摩る。
「ホメロス、わたし、こわい」
「なにも心配ない、私が守る」
強張った声色に努めて穏やかに返しながら、内心舌打ちしたい思いだった。こんな事態になったのは明らかにホメロスの手落ちだ。彼女に二度と怖い思いをさせまいという密やかな誓いは早々に破られたのだ。
番犬代わりにもなればとプレゼントしたはずのベビーパンサーは、どうやら急に襲ってきた格上の魔物に尻尾を巻いて逃げ出したらしい。ソファの下でもふもふの警戒心の塊となっているベビーパンサーを見つけたホメロスは、シャーシャーと見当違いな相手に威嚇してくるその小さな獣の姿に忌々しそうに舌打ちした。
肝心なところで役立たずならば、いっそ捨ててしまおうか。
その夜、隣で眠るナマエのうなされる声にホメロスは目を覚ました。体を起こして灯りをつけ隣を見ると、彼女が額に玉のような汗を浮かべながら苦しそうに身悶えている。
「ナマエ、ナマエ起きろ」
これは一度起こした方がいいと判断し、ホメロスは強く彼女の肩を揺さぶった。触れたネグリジェの生地がうっすらと湿っている。ひどい寝汗をかいているようだ。
「ホメロス……?」
「ああ、オレだ」
ようやく目を覚ましたナマエは、しばしぼんやりとした眼差しでホメロスを見上げている。
「……あっ!」
と思ったら急に声をあげ、掛布を勢いよく捲り上げた。途端にあたりに広がる錆鉄の匂い。血だ。ホメロスが鼻に皺をよせ、匂いの元を視線で辿った。彼女のネグリジェの、下腹から太ももの半ばあたりまでがどす黒い色で染まっている。血の甘い匂いに頭が一瞬くらりとして、正気を保つように一度ぎゅっと目を瞑る。
下腹部からの出血に、胎に宿った命は人知れず流れたのだと知った。ナマエは言葉もなく血に染まる下半身を見つめ、虚ろなまなざしでぽつりと呟いた。
「……ごめんなさい」
「いや」
それ以外、何も言えなかった。
傷心のナマエを腕に抱えながら、まさか血の匂いに当てられて必死に自我を保とうしているなど。甘い匂いに目覚めた魔物の性が彼女の血を欲し、獲物を待ちわびたこの口の中が唾液で溢れていることなど絶対に悟られてはいけない。
勇者一行は着実に歩みを進めているようだ。
今日は六軍王がひとり、覇海軍王ジャコラが勇者によって倒されたとの報告が上がってきた。ホメロスは配下の敗北をウルノーガに報告しなかった。そんな報告などしてしまえば、魔王自らが勇者を探しに出てしまうだろう。となれば、この城でグレイグとの因縁に決着をつけるという宿願を叶えられなくなる。
日が経つにつれ、勇者一行の到着を今か今かと待ちわびるようになった。早く来い、グレイグ。早く来てくれ、早くはやくハヤく――!!
それは正しく断末魔だった。ホメロスの人間としての理性はとうに魔物の意識にそのほとんどを浸食され、もはや風前の灯火だ。自分が完全に魔に落ちる前にと、友へと発した最期のSOSだったのかもしれない。
魔に飲まれてしまえば、狂暴化した自分がナマエをどうするか分からない。
だんだん、人間の食べ物の味も分からなくなってきた。食卓に並ぶナマエの手料理よりも、目の前に座る美味しそうな人間の女の甘い匂いや柔らかそうな肉にこそごくりと喉が鳴ってしまう。それを誤魔化すように目の前で湯気を立てるシチューを一口含んで、何度か咀嚼して飲み込む。味がしない。まるで砂を噛んでいるようだった。
「……お口にあいませんか?」
ホメロスの手が止まってしまっていることに訝しんでか、ナマエは不安そうにこちらを窺ってくる。ホメロスはぼんやりとしながら、気遣わしい視線を向けてくる女の珠のような肌や、ふっくらとした頬、動脈の通る首筋へと虚ろな目で舐めるように視線を這わせた。
魔物になったこの体が欲しているのは血だ。こんな味気ない人間の食べ物ではない。あの夜啜った彼女の血の味が舌にこびり付いて、忘れたくとも忘れられない。
「ホメロス? ……どうしたの?」
「……ああ、」
あの肌の下に流れる血潮を浴びたい。愛する女の血を浴びるのは、さぞ心地いいのだろう。
「――ホメロス!」
強い口調で呼びかけられ、ハッと我に返る。焦点を失っていた視線を目の前の彼女に合わせると、いたく心配そうな顔がこちらを覗き込んできている。ホメロスは慌ててスプーンを持ちなおし、誤魔化すようにナマエへと微笑んだ。
「ああ、いや、すまん。少しぼうっとしていた。美味しいよ」
そうですか、とナマエはなおも怪訝そうに小首をかしげる。だが明らかに不審な様子のホメロスを、彼女はそれ以上追及することはなかった。
「きっとお疲れなんですね。今日は早くお休みになったらどうですか」
「ああ、そうしよう」